【誰にでも若い時代がある】夜の谷を行く/桐野夏生(文藝春秋)
連合赤軍を背景に描いたフィクション小説。読み応えある量、そして内容です。
夜の谷を行く/桐野夏生(文藝春秋)
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〇あらすじ
図書館とジム通いが趣味の初老・西田啓子は、誰とも深くかかわらず、目立つことを嫌って静かに生きていた。そんなある日、昔の仲間から1本の電話がかかってくる。「フリーライターの古市洋造さんが西田さんを取材したいそうです」その電話を境に、西田啓子の静かな生活は崩れていく…。
〇感想 ※ネタバレ注意
「男とか女とか関係ない」と世間ではよく言いますが、改めて「男と女は圧倒的に違うもの。相容れないもの」だなと実感しました。だって、男の体じゃ子ども産めないもんね。そう考えた理由はネタバレになってしまうので伏せておきますが、どんな時代のどんな生き方をした人間でも、必ず関わる問題だな、と。
本書に出てくる主人公・西田啓子の姪っ子・坂本佳絵と同じく、私は「連合赤軍」なんてよく知りません。学生運動もよく知らないし、あさま山荘事件もよく知らない。つまりは、「名前聞いたことあるけど、詳細はハテナ」です。それでも本書は面白かったです。主人公・西田啓子は架空の人物ですが、話に出てくる組織のメンバーは実在した人物も多く、ある一人(西田啓子)から見た組織の構造・性格・理解が興味深い。別の人間から見た組織はまた違ったもので…というのも、実際の連合赤軍事件とリンクして楽しめるのかも。あの組織は一体なんだったのか、100%解明することはできないっていうことが感じられる1冊です。
ちなみに作中に出てくる「こういう事件にはマニアみたいなやつがいて…」のくだりがなかなか怖い。確かにそうなんだろうけど、一度世間をにぎわせた人たちは、やっぱり生涯静かに暮らすっていうのは、なかなかできないんだろうな、と。