恋愛小説『忘れたくない恋をした』17
★忘れたくない恋をした★17
「もしもし、吉村です。お疲れさまです。」
電話の相手が出る。でも、思っていたいつもの対応と違う。
「何が、吉村です!お疲れさまです!よ」
不機嫌な声が、のどの奥から出てきた。可愛くない、媚びない、男友達に対して使う用のあたしの声。
「どうしたんですか、こんな遅くに」
「だから、何なの?」
ばかにされているのだろうか。もう、慣れてはいることだけど。
「寒っ!」
「え、外なの?」
「いや、いま電話取るために部屋出てきた」
「女の家?あたしからの電話をカモフラージュするための敬語?」
「いや、自分の家だよ。ただ、珍しく相方が語ってるとこ電話とるの悪いかと思って、出てきた。しかし寒いな。ていうか、お前からの電話なら女の部屋にいたって、フツーに出るわ」
相方というのは、吉村が一緒に住んでいる幼馴染のことだ。ちゃんと話したことはないけど、高校は3人とも一緒だった。調子がよく、男女問わずに八方美人な吉村とは違って、中野くんは、心を開いた人としか仲良くしていなさそうな印象がある。特に、女の子に対してそれは顕著で、私は吉村とこれだけ仲がよくても、中野くんが笑顔になっている場面に遭遇したことがない。
「あ、そう。寒いとこ電話とるために、わざわざ外出てもらっちゃって悪かったね」
「いや、別に。で、何かあった?」
確かに、理由もなく電話したわけではない。いつもそうだから、吉村はちゃんと分かっていた。
「…なんか、気分が冴えなくて」
「お前なぁ、気分が冴えないときに電話する相手が俺って、おかしいだろ。寂しい女」
「あんたには何言われても、傷つかないようにできてるのよね、あたし」
ふーん、と吉村が気のない返事をしたのが聞こえた。
そう、あの日から。あたしは、あんたの言葉や行動にいちいち傷つくのはやめたの。ずっと、あんたの一番の女友達でいるために。一生、そばにいるための方法がそれしかなかったから。
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