【ハードボイルドの短編小説】道具箱はささやく/長岡弘樹(祥伝社)
本紹介。今回は、久しぶりのハードボイルドの短編小説です。
道具箱はささやく/長岡弘樹(祥伝社)
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〇あらすじ
声探偵
おれは、小学生誘拐事件の容疑者の男、伊形を見張る仕事をしていた。裁判所から逮捕状が下りて、まもなく課長がアパートに来るのを待っていたが…。
リバーシブルな秋休み
仕事が忙しい私は洗濯が間に合わないこともあるので、5歳の娘の麻未にはよくリバーシブルの服を用意していた。わたしの真似をして赤色の方を選んだ麻未を置いて、私は仕事に出かけた。そして、事件が起こる……。
苦い厨房
わたしは、店内予選で中国人の郭峰花との対戦が決まっていた。そんな予選が迫った頃、店に強盗が入り…。強盗の招待は?予選の結果は……?
風水の紅
義母からの嫌味に耐えながら生活しているわたしは、義妹から茉里から教わった風水メイクにはまっている。人間の顔を時計の文字盤になぞらえて、自分の予定に合わせて幸運を呼び込めるのだ。この日も自宅でサビ残だったわたしは、その時刻に合わせて風水メイクを施していた。すると、義母に事件が起こり……。
ヴィリプラカの微笑
いつも夫婦喧嘩ばかりの私は、友人の和世からヴィリプラカという小さな像を借りてきた。夫婦喧嘩を調停する神様なのだという。それ以来、私と旦那はビリプラカの前で思いっきり夫婦喧嘩をするようになったのだが…。
仮面の視線
通訳兼運転手のエシャンからプレゼントを受け取ったわたしは、中身を見る前に現場に到着した。基礎用のコンクリ―トが1センチ分足りないことが発覚したとき、地元の警察官が「この近くでバーグ(虎)にやられた死体が見つかって捜査している」と訪ねてきた。1センチの誤差をごまかすことに決めた私は、捜査の協力をし、その日遅くまで仕事をしてホテルに戻る予定だった。1センチの誤差をごまかすだけだったのに、嘘が嘘を呼び……。
戦争ごっこ
義父はアルツハイマー型の認知症。幼少時代にこの町で空襲にあい、かない恐ろしい思いをしたらしく、ダダダとかドカーンだのという大きな声で騒がれると当時のことを思い出してしまってパニックを起こす。この日も、息子がおいっこと戦争ごっこをしていると、義父は押入れの中に隠れていたのだった。
曇った観覧車
同僚の青木千草が急性白血病で入院した。快方には向かっているらしかったが、千草の代役で思いを寄せる川口多香美と2人きりになるチャンスを得たぼくは、観覧車の中で彼女に告白しようと決めた。2人きりだと思っていたからだ。それなのに……。
不義の旋律
8年前、ある男に妻を殺されたおれは事件のショックで市立病院の精神科に通っていた。そこで知り合った亜紀子と不倫関係になってから、6年がたっていた。
意中の交差点
探偵の仕事をしているわたしは、金持ちお嬢様・小幡小百合に意中の相手がいるのかどうか、いるのであれば相手がどんな人間かを探る仕事にあたっていた。それが、わたしにとって最後の仕事となる。この仕事が終われば、実家に戻る予定なのだ。
色褪せたムンテラ
息子の葉汰が高熱を出して入院している病院に病状の説明を受けるために向かったおれは、帰り道お土産を渡し忘れたことに気づいて病院に引き返した。そこで職場から「発砲事件があったから捜査せよ」との電話を受ける。息子の姿が見当たらなかったが、その前に自分の警官としての仕事を果たそうと、おれはヒットマンを捕まえるべく院内を探し始めた。
遠くて近い森
血がつながっていない遠縁の親戚・須貝逸郎のもとで暮らしているぼくは、逸郎がオーナーを務めるペンション・シルビアの手伝いをしている。ある日、鈴木潤子という客が宿泊しにやってくるが、彼女は「手を怪我していて文字が書けない」とウソをつき、宿泊カードをぼくに書かせた。他にも気になる点があり、ぼくは彼女の怪しさを逸郎に訴えるのだった。
虚飾の闇
タレントであるわたし・羽咲ルミは、ここ最近細かいスケジュールを匿名掲示板にアップされ続けていることに悩んでいた。マネージャーの持田は、まもなく娘がデビューする。わたしと同じようなリスクを抱えることを心配していないのだろうか、と持田に問うが…。
レコーディング・ダイエット
精神科医のわたしはストレスを発散するために食べまくり、結果体重が90キロを超えた。そこで始めたレコーディング・ダイエットがうまくいっているので、担当しているクライアントにも話をしたりしていた。それにしても、ここ最近、不運な事故が続いている…。
父の川
6年生の私と4年生の妹の穂花。母が出て行ってから、私たち姉妹は父と3人で暮らしていた。明日から夏休み、父と3人で父の実家に遊びに行くことになっている。そして、父と母はまもなく離婚。私と穂花は、母と父とそれぞれ一人ずつ引き取られることが決まっていたのだった。
ある冬のジョーク
師走初日、明日から休暇に入るおれは帰る直前、先輩のジョークに涙するほど笑った。どんな事件が起こっても電話はしない、という約束を再確認し、おれは仕事場をあとにした。
嫉妬のストラテジー
仕事終わり、わたしは恋人の内浦征寿に電話をした。しかし、仕事が忙しいと電話を切られ、そこに学生時代からの友人・三田園誠が現れた。そこでわたしは、征寿の職場からのぞける喫茶店に三田園を誘った…。
狩人の日曜日
風邪をひいて声もひどいぼくは、なんとか職場であるY警察署に出社した。職場では、サーバーでコーヒーを飲んだ場合、豆代として1杯50円を払わなければいけないのだが、決まりを無視する人が多いことに困っていた。課長の南谷がやってきたので相談すると「だったら、お前の顔を印刷し、目の部分だけ貼っておけ」という。そして、洒落たジョークだろと言うのだった。
〇感想
どちらかというと、後味悪いというか、考えさせられる物語が多いかな?という印象。なので、スッキリした読みごたえが好きな方には不向き。あとは、ハードボイルドものが半分、他は普通にミステリーです。ハードボイルドが好きで読む方もちょっと「あれ?」ってなるかも。普通にミステリー好きにおすすめ。
個人的に好きなのは、リバーシブルな秋休み。えぇぇ、そんな終わり方?と驚いたのが、ヴィリプラカの微笑です。