【不思議な医療小説の短編集】嗤う名医/久坂部羊(集英社)

医師で作家っていう肩書の方を、すごいと思うんですよね。医師ってことは、理系科目をものすごい勉強してきたはずで、加えて国語力がある…。いわゆる天才じゃないですか!

嗤う名医/久坂部羊(集英社)

嗤う名医

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○あらすじ

「寝たきりの殺意」

68歳の私は、脊柱管狭窄症で寝たきりの生活をしている。朝起きると「知らぬがホトケ」という言葉が頭に浮かぶ。理由はわからない。息子は優しいが、その嫁は介護が必要な私に厳しく、私はその憎い嫁をどう殺すか考えるのが楽しい趣味だった。

 

「シリコン」

小さなころから、運が悪いと言われ続けていた私。自分でもその自覚はあった。大人になり、貧乳にコンプレックスを持っていた私はシリコンを注入する豊胸手術を行ったが、やはり運の悪さから悪い医者にあたってしまい、今度はシリコン除去のために病院をあたっていた。

 

「至高の名医」

至高の名医と呼ばれている清河は、人にも自分にも厳しい、純粋で素直な名医だった。しかし、ある日自分の重大な見落としで患者を死に至らせてしまったかもしれない可能性に気付く。そして、そこから『自分らしくない』行動が続き、少しずつ変わっていく。

 

「愛ドクロ」

原山は、コンビニで出会った少女の頭に触れてしまうくらい、人間の頭蓋骨に興味がある。形の良い頭蓋骨を持つ女性を妻にしても物足りず、なんとか本物の人間の頭蓋骨を自分のコレクションにすべく奔走するが…。

 

「名医の微笑」

矢崎は、患者からの文句やグチに耐え、家庭では実父の介護をし、妻からの文句にもひたすら耐える生活をしている。周囲からは、「先生は立派ですね。ストレスたまらないんですか?」などと聞かれる毎日。「溜まらないこともないけど」と微笑む矢崎は、人には言えないストレス発散法があった。

 

「嘘はキライ」

人の嘘がわかる水島は、同窓会で久しぶりに会った堀から「ある人の言うことが本当かどうか確認してほしい」と依頼される。事実はすぐにわかるが、どう収集をつけるか悩んだ水島は…。

 

○感想

つり革広告で見た本が気になったので、読んでみました。最初は、短編集ということすら知らずに。

うーん、これはなんていうカテゴリーになるんだろうか。わりと、どれも『うーん…』とうなる感想が多いです。スカッとするのは、「嘘はキライ」くらいかな。あとは、全部『うーん…怖い』。

人間臭さが垣間見えるのは、「至高の名医」。人って、ある出来事をキッカケに歯車壊れるよねっていうのがわかりやすく描かれています。最後の後味もさほど悪くありませんが、自分も気を付けないといけないなと思わされる内容でした。

『可笑しくて怖いミステリー』って銘打たれてますが、可笑しいかどうかはわかんないなぁ。でも、間違いなく怖い。そして、医師っていう職業の独特さは、もうビックリするくらい伝わってきます。

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