【女35歳、アイドルファン5人の物語】婚外恋愛に似たもの/宮木あや子(光文社)

久しぶりに大好きな宮木あや子さんの本を。

婚外恋愛に似たもの/宮木あや子(光文社)

婚外恋愛に似たもの

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〇あらすじ

アヒルは見た目が10割

小さなころから、勉強も恋愛も仕事においても桜井美佐代は常に3番目だった。テレビ関係の仕事をしている夫と結婚して8年、35歳。子どもはできず、夫にはたくさんの愛人がおり、アイドルグループKGB64に夢中。そしてある日、夫から「家を出て行ってくれないか」と言われた美佐代は、INAZUMAのコンサート遠征に出かける。美佐代の目的は、INAZUMAのバックダンサーを務めるデビュー前のグループ・スノーホワイツの神田みらいだった。

 

何故若者は35年生きると死にたくなるのか

千葉で生まれ千葉で育った益子昌子は、生まれてこのかた下から3番目の人生を送ってきた。東京に憧れながらも、千葉の男と19歳で妊娠・結婚し、35歳になった今も相変わらず千葉で暮らしている。夫はネットワークビジネスにはまって借金を作り、息子はバカなヤンキーに成長した。自分の人生に悲嘆し、自殺未遂を図ったこともあったが死ねず、今は東京のスーパーにパートに出かけている。パートを頑張る理由は一つ、理想の息子であるスノーホワイツの八王子を応援するためだった。

 

ぬかみそっ!

隅谷雅は、コンサル会社をやめ独立した35歳の女性経営者。同じく会社経営者の父・元タカラジェンヌの母を持つ雅だったが、29歳の時に決別。理由は、スノーホワイツの高柳主税以外とは結婚できないと、親が決めた縁談を断ったからだ。常に1番であり続けた雅だったが、どうしても1番になれないことがある。それは、スノーホワイツの高柳主税のおっかけでの順位。雅よりも先にファンになった2人が抜けてくれず、雅はおっかけ3番目としてひっそりと活動していた。

 

小料理屋の盛り塩を片付けない

「凡庸に生きることで、男からも女からも好かれる人間であれ」と育てられた、「普通」が取り柄の山田真美。スコーピオンズ、略してスコップの松平君に恋をしていたため、女友達から商社マンの夫をつかまえたことを褒めたたえられてもそこに愛情はない。あまりに興味がなさすぎて、夫が会社をやめ作家になっていたことにもしばらく気づけずにいたくらいだった。急に姑と同居が決まったために行けなかったスコップのDVDを見ていると、そのバックダンサーを務めていたスノーホワイツの皐月ジルベールに心を奪われてしまう。

 

その辺のフカフカ

ブスでデブだったため、ずっと一人で生きてきた片岡真由美は、一人でできる「妄想」が得意になる。さらに女性が入り込む余地のないBLにはまり、そのままBL作家になった。しかし、出版社から切られてしまい、本屋にはやりの作品を勉強へ行く。そこで目に入ったアイドル雑誌で見つけたスノーホワイツの大船眞秀のとりこになった。それから、バイト生活の合間にスノーホワイツのメンバーのBL作品をネットにアップするのが趣味である。

 

茄子のグリエ~愛して野良ルーム2

「35歳、スノーホワイツのファン」ということだけでつながった見た目も生活レベルもまったく違う5人が、スノーホワイツ初の単独コンサートに参戦した。その帰り、言葉にできない「さみしさ」を抱えたまま焼き肉屋に向かった5人は、自分たちの現状を思わず他の4人の幸せレベルと比べてしまう。

 

〇感想

知りませんでした…宮木あや子さん、ジャニヲタだったんですね!私自身がかつてジャニ好きだったことで、本を読みながら「やたら描写詳しいなー、取材したんだろうなー」と思ってたら、(取材もしたんだろうけど)知識としてあったことだったとは!びっくりです。そして、相変わらず文句なしに面白かったです。

おっかけなんかもこれ以上深く説明されたら一般読者はついてこれないだろうし、そのバランス加減も絶妙で。単なるファンの話に過ぎないわけではなく、彼女たちの人生・生活の中にある「大切なもの」としてのアイドルの位置づけがすっと入ってきました。男性のアイドルに対する姿勢と女性のアイドルに対する姿勢の違いも書かれていて、すごく納得。面白かったな、アイドル好きじゃない方も楽しめるはずの1冊です。

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