【宝石が彩る短編ミステリー本】サファイア/湊かなえ(角川春樹事務所)
この週末、移動時間が長い場所に行くことが多くて本をたくさん読めました。一つずつ、ご紹介。
サファイア/湊かなえ(角川春樹事務所)
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○あらすじ
真珠/ルビー/ダイヤモンド/猫目石/ムーンストーン/サファイア/ガーネット。七つの宝石がタイトルとなった短編集で、それぞれ宝石が物語の中で重要な役割を担っています。
「真珠」 たぬき顔の女性が、わたしに過去販売していた自社製品「ムーンラビット」という歯磨き粉にまつわる思い出について語りだす。彼女の話を聞きながら、自分の思い出を振り返るわたし。互いに理解者に出会った…と思う一方で、女の真意について考え始める。
「ルビー」 東京の小さな出版社で勤める私は、休暇で両親と妹が暮らす田舎に帰ってきていた。3年前、家族会議を行った結果、家の裏に老人福祉施設が建てられていた。施設を眺めていると、妹から家族がある入居者と仲良くなっていると聞き…。
「ダイヤモンド」 理想の女性と出会い、プロポーズを終えた俺は、店を出たところで一羽の雀を助ける。その夜、「昼間助けていただいた雀です。恩返しをさせてください」と見知らぬ女性が家にやってきた。
「猫目石」 猫に関わると昔からロクなことが起きない。そう気づいてから猫との接触を避けていたのに、隣人の飼い猫を探すことになってしまった主婦・真由子。猫好きの夫・靖文と娘の果穂も手伝って無事に猫を助けることができた。しかし、それから円満だった家庭に不穏な空気が流れ始める。
「ムーンストーン」 幸せな結婚生活を送っていたわたしは、ある出来事をキッカケに夫との関係が悪化していく。そして、不幸のどん底へと落ちたところに、忘れもしない中学時代の同級生が現れて…。
「サファイア」 子どもの頃から、人にねだることができなかったわたし。それが原因で集団行動が苦手になり、大学生になってから趣味は一人旅だった。そして、旅の最中に出会った彼と付き合うことになり、人生で初めて「指輪がほしい」とおねだりをする。
「ガーネット」 大好きな彼と不幸な別れ方をしたわたしは、その気持ちのやり場を見つけられずにいた。なんとか普通の生活を送っていたが、あるとき小説を書いた。そして、その小説によって様々な出会いが生まれる。
○感想
大好きな、湊かなえさんの本。長編も好きだけど、短編も好き。宝石が重要な役割を担う小説ではあるけど、宝石の知識なんかなくても純粋に楽しめます。
私は、最初の二つが好きかなぁ。人の黒い部分と白い部分が描かれているのと、登場人物の細かい性格が見えてくるような物語なので。加えて、なんだかちょっと良い続きがありそうなのに、そこが書かれてないお話だからでしょうか。「ムーンストーン」も好きかなー晴れ晴れしい結末にはならないのだろうけど、山あり谷ありというか、自分のしたことは良いことも悪いことも返ってくるというか、救われないことばっかじゃないよねって思えます。
すべてが完結している話かと思いきや、最後の「サファイア」と「ガーネット」だけは連作になってます。
短編なのに、途中でやめられない本でした。うむ、さすが…。