恋愛ハウツー小説『恋愛勉強中。』11
★恋愛勉強中。★11
9ヶ月後。
「ちゆき、いよいよだね」
「あ、黒木先輩…」
面接を無事に通過した私は、来月から希望通り留学が叶った。もちろん、今月末で会社は退職になる。準備のために有給消化をもらって、あと2週間弱で出勤は終わりだった。
「準備は、順調?」
「いえ、なんだか心がざわついて、準備進まなくて…。有給消化中に全部やることにして、今はまだ何も」
「そっか…、それも良いかもね。 引継ぎは?」
「それも、もうちょっと、ですかね。 神田さん優秀だし、不安はないですが。最後まで出来る限りのことはしておきたいっていうのはあって」
「ちゆきらしいね」
「ありがとうございます、でも…」
教えながら同じ仕事をしていた神田さんに、4月から1人で仕事を任す。私たちのチームに今年新入社員は入らず、年度の途中で中途を採用する予定らしい。仕事量としては、神田さんに大きな負担はないはずだ。それよりも、引っかかっていることは…。
「田中部長のこと、でしょ?」
「知ってたんですか?」
「そりゃ、私だって言われたんだから。 引き止めてくれないか、って」
一時は、「神田さんに推し変とか!」なんて言ってムカついていた田中部長だったけど、なんだかんだ私のことを可愛がってくれた。アドバイスをくれたり、励ましてくれたり、新卒の私をここまで育ててくれたのは、月並みな言葉だけど、田中部長だった。
「そうだったんですか? で、先輩はなんて?」
「やらせてあげてください、って言ったよ。 嫌でやめるって言ってるのなら止めますが、前に進もうとしてる後輩を引き止めることはできません、って」
「そうですか…」
留学のことを打ち明けたとき、田中部長は予想以上に怒った。止められることはあるだろうと思ったけど、怒っている理由が分からなかった。そして、最終的には「勝手にしろ」と言われたのだ。それ以来、業務連絡でしか会話をしていない。あんなに風通しの良い関係だったのに。
「ちゆき、部長が怒った理由は分かったの?」
「分かりません…。 でも、多分私、部長に一生懸命育ててもらったんだと思うんです。だから、裏切られたって思ったのかな、とか、試験の前に相談してくれなかったことに対する怒りかな、とかいろいろ考えてはみたんですけど…」
「それも、もちろんあるかもね。 でも、ただ部長は寂しかったんじゃないかな」
「寂しい?」
「そう。 怒ってたんじゃなくて、寂しい感情のぶつけ方が分からなくて、怒ってるように見えたんじゃないのかな。きっと、もっと自分がこうしたい、ああしたい、って思ってたことができないってわかって寂しい、もっと成長を見ていられると思ってたのに、いなくなるなんて寂しい、悩みとか考えていることは、すぐに相談してきてくれると思ってたのに違って寂しい。そして、その感情を分かってもらえなくて寂しい…その『寂しい』感情があふれて、うまくコントロールできなくて、結果怒ってるように見えたんじゃないのかなーって」
「…。でも、どうすればよかったんでしょうか」
「立つ鳥、あとを濁さない! このまま会社やめたら、後悔するよ。今後、うまくいかないことがあったときに、『やっぱり、部長の言う通りだった』とか悪い方向に考える材料に使っちゃう。だから、きちんとお話しておいで。田中部長、ちゆきに声かけられるの待ってると思う。自分から話しかけるのは簡単だけど、いや、田中部長の性格考えたら難しいかもだけど(笑)部下が自分で考えて行動してくるのを待ってるんじゃないかな」
「…確かに、その通りです。 ごはん、誘ってきます」
「うんうん、それが良いよ。 来週は、送別会つまってるだろうから、今週中に話しておいで」
「ありがとうございます!」
仕事や雑務、片づけだけじゃない。感情の整理、人間関係、きちんとしなければいけないことって意外と色々ある。恋愛でも、そうだけど。
新しいことに向かうときには、それまでのもやもやを断ち切らなくちゃ…!
★立つ鳥あとを濁さない★
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