恋愛小説『忘れたくない恋をした』14

★忘れたくない恋をした★14

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「何が、吉村です!お疲れさまです!よ」
橋本麗菜が、電話の向こうで不機嫌な声を出す。
「どうしたんですか、こんな遅くに」俺は、構わず先輩との会話を続ける。
「だから、何なの?」
後ろ手に玄関のドアを閉めて、ようやく安心し、橋本との会話を開始した。

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「寒っ!」
「え、外なの?」
「いや、いま電話取るために部屋出てきた」
「女の家?あたしからの電話をカモフラージュするための敬語?」
「いや、自分の家だよ。ただ、珍しく相方が語ってるとこ電話とるの悪いかと思って、出てきた。しかし寒いな。ていうか、お前からの電話なら女の部屋にいたって、フツーに出るわ」
「あ、そう。寒いとこ電話とるために、わざわざ外出てもらっちゃって悪かったね」
嫌味も、嫌味と受け取られていないようだ。からかいがいのないやつめ。

「いや、別に。で、何かあった?」
「…なんか、気分が冴えなくて」
機械から聞こえる声に、落ち込みの色が混じる。
「お前なぁ、気分が冴えないときに電話する相手が俺って、おかしいだろ。寂しい女」
ふん、と橋本が鼻で笑う。
「あんたには何言われても、傷つかないようにできてるのよね、あたし」
「ふーん」
そんなこと自慢げに言われても、こっちだってなんともない。

 

 

俺と雄輔の関係が幼馴染なら、橋本とはくされ縁とでも言うのだろうか。そもそもの出会いは、高校受験のために通っていた塾だった。まだ中学生だった俺たちは、特別仲が良かったわけではない。別々の中学で、ただ同じ高校を目指していたというだけの関係。名前と顔はもちろん知っていたけど、お互いに話をした記憶はない。

それが、あることをキッカケにして、一番話せる女友達に変化した。東京と新潟と、離れていた大学時代ですら、お互いに把握してないことなどないくらい、仲の良さは持続したままだった。

「元カレからね、先週電話がきたの。それほど久しぶりでもなかったんだけど、なんか話し込んじゃって」
聞いてもいないのに、結局話し出す。立ち止まっていては寒かったので、手ぶらのままだが、俺はコンビニに向かう。早歩きで向かえば、歩いて5分かからない。

「でね、1時間くらいかな。ばーってくだらないこと話したと思ったら、急に黙り込んで。俺と戻る気ないか、って聞かれたの」
ふーん。良かったじゃん、と俺は気のない返事。

「でもあたし、そいつとは一緒にいて心地いいし、嫌いにはなってないけど、でもなんかもう違うかなって思ってて。戻るって言ったって、東京と大阪じゃない?遠恋してまで付き合うって、末は結婚しかないんじゃないかって思ったら、それはやっぱり、うーんって思っちゃったのね。だから、それを素直に言ったの」
橋本の直近の元カレは、大学時代から付き合っていた男だ。
「ん。で?」
「そしたら急に元気なくして。分かった、って。俺は、やっぱり麗菜となら結婚考えられると思ったし、だからやり直したいって思ったんだけど、とか言い出して。よく言うでしょ?あたしが、就職先決まったあと学生時代から散々そういう話してたって、スルーしていたの向こうじゃない?本当に遠距離になるって決まったときだって、いろんな選択肢があったと思うのよ。だから、勝手すぎるって言って、電話切ったの。本気だったら、また連絡くるかなとも思ったし」
「うん」
「なのによ。さっき、電話がきて。そもそも、こないだ電話切った直後に連絡ない時点で、一体なんだったのってちょっとイライラしたのに、今日の電話なんだったと思う!?」
知るかよ、と心の中で毒づきつつ抑える。

「さぁ。なに?」
「俺、来年結婚することになったって言うの!そんなことって、ありえる?あたし、意味わかんなくて、は?って聞いたら、相手の女の子とはあたしと知り合う前からずーっと仲良くて、お互いに恋愛相談するような間柄だったんだって。あたしとの話とか相談したりしてたらしくて…だからって、こんなタイミングある?あたしとより戻さないってなって、1週間よ?ありえない!本当にありえない!!あーむかつく!本当に、男ってなんなの?」
寒空の中、冷たい耳に響く叫び声ほど不快なものはないな。まして、内容が内容だけに。

「男、ってひとまとめにすんな。人の気持ちなんて、簡単に動いたり、どう頑張っても動かなかったり、さまざまなんだよ。お前、戻ること断ったの後悔してんの?」
少しの間があった。
「そろそろ、相手探さないとやばいって思いが先行してて、正直自分の素直な気持ちが分かりにくかったけど、断ったことは、後悔してない。そんな変わり身の早いやつと、結婚なんか、しなくて良かった、と思う。たぶん、強がりじゃ、ないと思う、自信ないけど」
確認しながら、同時に発されている言葉たち。その気持ちは、痛いほど分かる。「分かるよ」素直に言った。

「でもさ、気持ちが一瞬分からなかったにしろ、最終的に後悔してないって言い切れるようになったんなら良かったじゃん。結婚しなくて。イライラしてる時間ももったいないし、早いとこ他にいい男見つけろ」
「分かる?やっぱり、一紀は分かってくれる?」

言葉が、胸に刺さる。やっぱり、俺に話してきた理由は、そこにあったのか。

「そのセリフには、深い意味があると解釈するべきか?」
「うん、そうだね」彼女は、あっさりと言った。

「実はね、タイミングよくあの子の話を耳にしたの」

あの子。

「芽衣、お母さんになったって」

がつん。

背後から鉄アレイでも頭に落とされたような、衝撃。

「結婚、してたの?」

「そうみたい。もちろん、本木と」

 

吐き気がする。俺の悪夢は、ここまで現実で形になったのか。

関連:恋愛小説『忘れたくない恋をした』15

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